彼方へ 2.0

2017年発刊の『彼方へ』が完売したので重版をしようかという話になったが、山田は加筆したいという。なんと100ページほども増え、本もびっくりっするほど厚くなった。紹介文に代わり前書きの一部を紹介する。

「2023年の夏。ウランバートルにあるチンギス・ハーン・ホテル、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲を聞きながらこれを書いている。諏訪内晶子の演奏だ。マンダルゴビの北西にあるアダアツクのビバーク。ルート上は気温43度、地平線には、あの時と同じ蜃気楼が見える。

2023年8月8日。現地時間午後4時18分。衛星携帯が不穏な音をたてた。衛星携帯の電波は、低軌道とはいえ780キロの高度から降り注いでいる。人類は素晴らしいデバイスを手に入れたものだ。

「どうした?」
「心肺停止です」
「心肺停止、だと?」

衛星を介した不明瞭な声は、とんでもない緊迫感を伴っていた。わたしは、天を仰いだ。
緊急の連絡先と記載されている彼の妻の携帯電話に、第一報をしなければならない。
この顛末も最終章に記述したい。」

著者 山田 徹

 
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著作 山田 徹(やまだ てつ) 

1955年生れ / 京都芸術大卒 / 水文・水資源学会正会員 / 文筆家 / 古書店店主

少年時代に読んだスヴェン・ヘディンの著書『さまよえる湖』や大谷光瑞の足跡に導かれるように、シルクロードや青蔵公路、幻のグゲ王朝遺蹟やカイラスやチョモランマに足跡をのばしてきた。とりわけゴビ砂漠やサハラ砂漠に精通し、中央アジアのアラル海、チャド湖、ロプノールなど水を失った湖とその周辺の文明と現代の政治を研究をしている。カラコルムハイウエイやチベットのマナサロワール湖、カザフスタンのバルハシ湖、モンゴルのウブス湖、ハルヌールなども調査。

地球上の「水問題」を多角的にとらえ、フィクション・ノンフィクションを問わず書き残すことをライフワークとしている。著書『楼蘭の黙示録』では彷徨える湖と楼蘭は、いかに地上から消滅したのかというテーマで水を失った文明の消滅を、その時代と現代の二つの側面から描き『蘇州夜話』では中国大陸の水の危機と人類の滅亡の道筋を描いた。

本書『アラル海の真珠』では、スラブ・ユーラシアの世界とアラル海が水を失う過程とその復活にかけた人々闘いを描いた。次作『極北』ではツンドラの大地と生命について問う。2024年夏予定。また『彼方へ』の重版を機に大幅加筆し『彼方へ2.0』を出版2024年春予定。ほか著書に『彼方へ』『脱藩』小出版物に『消えた落款の謎』などがある。建築家、クリエイティヴディレクターとしても活躍。日本国内外のラリーオーガナイザーとして著名。

SSER Publishing
SSER Organisation他代表

発売日:2023/12/1

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